◯強力な武器を備えていたストレリチア
植物には、数多くの病害が発生する。中でも困りものは、一番小さなウイルスの害である。この病気は、動物の場合はワクチンが開発されて、何とか手当ての目途がついているが、植物では一旦、体内に侵入したら最後、手当ての方法はなく、一貫の終わりで、徐々に体力が失われて行く。 タバコのような一年草では、ウイルスは種子には侵入しないので、まだ、よいが、ランのような多年草では、対策がないのが現状である。茎頂培養で薄めても、すぐに、また侵入されてしまう。この点でストレリチアは、アフリカ大陸の過酷な環境で生まれ育ったせいか、ウイルス耐性を身につけているので、ビクともしない。人間の世界では、新型コロナウイルス感染症のパンデミック騒ぎの中、ストレリチア を相手に出来たことの幸せを身に染みて感ぜずにはいられない。
バンクス卿が、派遣したフランシス、マッソンがロンドンへ送り届けたストレリチアは、300年近く経過しても、まだ、キューガーデンにて生きている。それに以前に生きていた年数は不明だが、これから先、何百年生きるか、その時までは分からない。つまり、少なくとも千年もの時間を生きるのがストレリチアの寿命なのである。短い人生の人間から見れば、無限に生きる植物は「お宝」ともいうべき存在なのである。手に入れた品が自分の代どころか子や孫の代まで生きているとなると、ストレリチアの選択には、それなりの心がけが必要であろう。
クエレハ自生地
それにしても、このストレリチア にも泣き所がある。ウイルスには強くても細菌には弱いことである。高温多湿の季節に発生するフザリウム菌や軟腐病には弱い。これらの菌は、乾燥の激しいアフリカ大陸では、発生することが少ないから、ストレリチアは、耐性を身につける必要がなかったからである。でも心配には及ばない。水はけの良い土地での地植えや鉢植えでは水切れが良いから、これらの細菌は増殖することができない。つまり、連続した湿り気を避ければ、発生することはないということである。
害虫も少しは寄ってくるが、気にするほどではない。アブラムシは、潰せばいいし、カイガラムシは、掻き落とせば済む。真菌類の赤サビや黒点病だって、気にしなければ、忘れた頃に消えている。こんなに気楽に付き合える植物は、そうそう多くはない、ストレリア 、バンザイ!
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